共用部からの雨漏りはどこを疑う?
2026.07.31
アパートやマンションの共用廊下、階段、エントランス、軒下などで水滴や雨染みが見つかった場合、どこから雨水が入っているのか分からず困ることがあります。
共用部の上に屋根があるからといって、必ずしも屋根だけが原因とは限りません。
外壁、笠木、ベランダ、防水層、雨どい、排水口、サッシまわりなど、雨水が入り込む可能性のある場所は複数あります。
さらに、雨水は建物内部を伝って移動するため、水が出ている場所と、実際に雨水が入っている場所が離れていることもあります。
共用部の雨漏りを止めるためには、濡れている場所だけを補修するのではなく、雨の降り方、風向き、上階の構造、排水経路などを確認し、原因を絞り込むことが大切です。
この記事では、アパートやマンションの共用部で雨漏りが起きたときに疑うべき場所と、原因調査、応急対応、再発防止のポイントを詳しく解説します。
- どこから水が出ているか
- いつ、どのような雨で症状が出るか
- 雨の強さや風向きとの関係
- 真上に屋根、ベランダ、外壁、排水口のどれがあるか
- 過去に同じ場所を補修していないか
- 給排水管からの漏水ではないか
この記事は専門家が監修しています

監修者:大谷建装工業株式会社 代表取締役
大谷 雄二
東京都板橋区・練馬区・豊島区エリアを中心に、
外壁塗装・屋根工事・雨漏り修理を手がける地域密着の専門業者。
長年にわたり住宅メンテナンスの現場に携わり、
戸建住宅・公共施設の修繕工事を多数監修。
本記事は、実際の施工経験および専門的知見をもとに
内容確認・監修を行っています。
▶ 保有資格
・1級建築塗装作業技能士
・1級建築施工管理技士
・有機溶剤作業主任者
※記事内容は監修者による確認を経て公開しています。
共用部の雨漏りは屋根だけが原因ではない
共用部で雨漏りが見つかると、まず屋根を疑うことが多いかもしれません。
しかし、建物の形状によっては、屋根よりも外壁やベランダ、防水層、笠木が原因となるケースもあります。
| 水が出ている場所 | 疑われる主な原因 |
|---|---|
| 最上階の共用廊下天井 | 屋根、屋上防水、軒先、雨どい、外壁上部 |
| 中間階の共用廊下天井 | 上階廊下の床防水、排水口、外壁、配管 |
| 外階段の裏側 | 階段床のひび割れ、踊り場防水、接合部、外壁 |
| エントランス天井 | 庇、防水層、笠木、外壁、上階ベランダ |
| 軒天 | 屋根、雨どい、破風、鼻隠し、外壁との取り合い |
| 壁面や床面 | 外壁ひび割れ、シーリング、排水不良、防水層 |
梁、鉄骨、下地材、配管などを伝い、離れた場所へ現れることがあります。
最上階の共用廊下で雨漏りしている場合
最上階の共用廊下天井から水が出ている場合は、まず上部に何があるかを確認します。
屋根材の割れ・ずれ・浮き
スレート、金属屋根、瓦などに割れやずれがあると、風を伴う雨で雨水が入り込むことがあります。
ただし、屋根材の下には防水シートがあるため、屋根材の小さな割れだけで直ちに室内へ雨漏りするとは限りません。
防水シートや下地まで傷んでいないか確認する必要があります。
棟板金や壁際板金
屋根の頂部にある棟板金や、外壁と屋根が接する部分の板金は、雨水を建物内部へ入れないための重要な部材です。
固定部の緩み、板金の浮き、シーリングの劣化、施工上の隙間があると、強風時に雨水が入り込むことがあります。
屋上や庇の防水層
共用廊下の上が陸屋根や庇になっている場合は、屋根材ではなく防水層を確認します。
- 防水層のひび割れ
- 膨れや剥がれ
- 立ち上がり部分の劣化
- 排水口まわりの亀裂
- 笠木との取り合い
雨どいの詰まりやあふれ
雨どいに落ち葉や土が詰まると、雨水があふれて軒天や外壁側へ回ることがあります。
屋根に異常がなくても、排水不良によって共用廊下の天井へ雨染みが出るケースがあります。
屋根面、板金、雨どい、外壁上部まで広く確認することが大切です。
中間階の共用廊下で雨漏りしている場合
建物の中間階で雨漏りしている場合は、上階の共用廊下床やベランダ、外壁、配管などを疑います。
上階廊下の床防水
開放廊下の床には、防水材や長尺シートなどが施工されていることがあります。
床面のひび割れ、シートの継ぎ目、端部、排水口まわりが傷むと、下階へ水が回る可能性があります。
排水口や側溝の詰まり
廊下の側溝や排水口にゴミが詰まると、雨水がたまり、通常は水がかからない立ち上がり部分まで水位が上がります。
その結果、端部や目地から雨水が入り込むことがあります。
床と外壁の取り合い
床防水の立ち上がりと外壁の取り合いは、雨漏りしやすい部分のひとつです。
防水層が低い、端部が剥がれている、シーリングが切れている場合は注意が必要です。
給排水管からの漏水
雨の日以外にも水が出る場合や、使用状況に応じて濡れる場合は、雨漏りではなく給排水管からの水漏れも考えられます。
共用階段から雨漏りしている場合
外階段や鉄骨階段では、踊り場、踏板、接合部、外壁との取り合いなどから雨水が入ることがあります。
踊り場の防水劣化
階段の踊り場に防水が施工されている場合、ひび割れや端部の劣化から下部へ水が回ることがあります。
鉄骨階段の接合部
鉄骨部材の継ぎ目やボルトまわり、床材との接合部に隙間があると、雨水が入り込みます。
サビが進むと、部材の膨張によって塗膜が剥がれ、さらに水が入りやすくなることがあります。
階段と外壁の取り合い
階段や踊り場が外壁へ接している部分では、シーリングや防水端部が傷むと雨水が入り込むことがあります。
排水勾配の不足
踊り場や階段床に水がたまりやすい場合は、表面の補修だけでなく、排水勾配や排水口の位置も確認します。
エントランス天井から雨漏りしている場合
エントランス上部には、庇、バルコニー、共用廊下、屋上などが配置されていることがあります。
庇の防水
庇上面の防水層や板金が劣化すると、庇内部へ雨水が入り、天井から水が出ることがあります。
笠木
パラペットや手すり壁の上部にある笠木は、上から入る雨水を防ぐ部材です。
継ぎ目、端部、固定部、外壁との取り合いから雨水が入ることがあります。
上階ベランダ
エントランスの上が住戸のベランダであれば、床防水、排水口、手すり壁、サッシまわりを確認します。
外壁のひび割れ
エントランスまわりの外壁にひび割れがある場合、風を伴う雨で雨水が入り、内部を伝って天井へ現れることがあります。
軒天から水が出ている場合
軒天は、屋根や雨どいの不具合が表面に現れやすい場所です。
- 屋根材や防水シートからの雨水浸入
- 雨どいの詰まりや破損
- 破風・鼻隠しの隙間
- 軒先板金の不具合
- 外壁上部から回った雨水
軒天の表面だけを張り替えたり塗装したりしても、上部の原因が残っていれば再びシミや剥がれが出ます。
外壁から雨水が入るケース
共用部の雨漏りでは、外壁も重要な確認箇所です。
外壁のひび割れ
モルタル外壁やコンクリート部分のひび割れから、風を伴う雨が入り込むことがあります。
ひび割れの幅だけでなく、深さ、位置、周囲の浮きも確認します。
シーリングの劣化
サイディング目地、サッシまわり、設備まわりのシーリングが切れると、雨水の入口になることがあります。
換気フードや配管まわり
外壁を貫通する換気フード、配管、電気設備のまわりに隙間があると、局所的な雨漏りにつながることがあります。
塗膜の膨れや剥がれ
外壁内部へ水が入ると、塗膜が膨れたり剥がれたりすることがあります。
塗膜だけを直す前に、水がどこから入っているかを確認します。
笠木・手すり壁を疑うべき理由
共用廊下や屋上の手すり壁上部には、笠木が取り付けられていることがあります。
笠木は見た目以上に雨漏りとの関係が深い部分です。
- 笠木の継ぎ目が開いている
- 端部処理が傷んでいる
- 固定部から水が入る
- 手すり壁にひび割れがある
- 防水層の立ち上がりと連続していない
笠木内部へ入った水は、手すり壁の中を通り、下階の天井や外壁へ現れることがあります。
水の入口と排水経路を確認したうえで補修方法を決めます。
共用部の雨漏りとベランダ防水の関係
上階のベランダから入った雨水が、下階の共用部へ現れるケースがあります。
床防水のひび割れ・膨れ
防水層が切れていると、下地へ雨水が入り込みます。
排水口まわり
排水口は防水層との取り合いがあるため、劣化や詰まりが雨漏りにつながることがあります。
サッシ下端
サッシ下端と防水層の高さ関係が悪い場合や、端部のシーリングが傷んでいる場合は注意が必要です。
手すり壁
手すり壁の笠木や外壁ひび割れから入った水が、床下へ回ることがあります。
雨漏りと水漏れを見分けるポイント
| 確認項目 | 雨漏りの可能性 | 水漏れの可能性 |
|---|---|---|
| 発生する時期 | 雨の日や雨の後 | 晴天時にも発生 |
| 風向きとの関係 | 特定方向の風雨で発生 | 風向きに関係しない |
| 水の量 | 雨の強さで変化 | 設備の使用量で変化 |
| におい | 通常は雨水に近い | 排水の場合はにおいがあることも |
| 周辺設備 | 屋根・外壁・防水 | 給水管・排水管・給湯管 |
見た目だけで判断が難しい場合は、雨漏り調査と配管調査の両方を検討します。
共用部で雨漏りを見つけたときの初動対応
1.安全を確保する
床が濡れている場合は、転倒防止のため立入注意表示や養生を行います。
照明器具や分電盤の近くで水が出ている場合は、感電や漏電の危険があるため、電気設備の確認も必要です。
2.写真と動画を残す
雨漏りしている場所、水の量、雨の強さ、発生時刻を記録します。
雨が止むと症状が消えることがあるため、発生中の記録が原因調査に役立ちます。
3.入居者から状況を聞く
- いつから発生しているか
- 毎回の雨で出るか
- 強風時だけ出るか
- 水の量は増えているか
- 過去に同じ場所を修理したか
4.応急処置を行う
バケツや吸水材で水を受け、床や設備への被害を抑えます。
ただし、大雨や強風時に屋根や高所へ上るのは危険です。
5.原因調査を依頼する
水が出ている場所だけでなく、その上部や周辺を含めて調査します。
雨漏り調査では何を確認するのか
目視調査
屋根、外壁、笠木、防水層、排水口、雨どいなどを確認します。
屋根裏・天井裏の確認
点検口がある場合は、雨染み、木部の濡れ、断熱材の状態を確認します。
散水調査
疑わしい場所へ順番に水をかけ、雨漏りが再現するか確認します。
複数箇所へ一度に水をかけると原因を特定しにくいため、範囲を分けて行います。
赤外線・含水調査
表面から見えない水分分布を確認する補助的な方法です。
機器だけで原因を断定せず、建物構造や目視結果とあわせて判断します。
やってはいけない応急処置
原因不明のまま広範囲へシーリングする
むやみに隙間を埋めると、内部へ入った水の出口を塞ぐことがあります。
天井だけを張り替える
雨漏り原因を直さずに天井を復旧すると、再びシミや剥がれが出ます。
雨天時に高所へ上る
濡れた屋根、階段、足場は滑りやすく危険です。
水漏れの可能性を無視する
晴天時にも症状が出る場合は、配管や設備も確認します。
修理を急いだ方がよい症状
- 天井材が膨らんでいる
- 照明器具から水が出ている
- 床が広範囲に濡れている
- 階段や廊下で滑る危険がある
- 天井材や外壁材が落下しそう
- 鉄骨部に著しいサビがある
- 複数階へ雨漏りが広がっている
- 過去の補修後も再発している
再発を防ぐために必要なこと
補修範囲を記録する
どこを、どの材料で、どのように直したかを写真と報告書で残します。
次の雨で確認する
修理後は、強い雨や風を伴う雨のあとに再発していないか確認します。
屋根・外壁・防水を一体で点検する
一箇所だけでなく、建物全体の雨仕舞いを確認します。
排水口と雨どいを清掃する
落ち葉やゴミが多い建物では、定期的な清掃が雨漏り予防につながります。
入居者からの連絡を記録する
発生日、雨の状況、場所、写真を建物ごとに残すと、再発時の比較がしやすくなります。
オーナー様が管理時に確認したいチェックリスト
- 最上階共用廊下の天井にシミがないか
- 階段裏にサビや膨れがないか
- 廊下床に水がたまっていないか
- 排水口や側溝が詰まっていないか
- 笠木の継ぎ目が開いていないか
- 外壁にひび割れやシーリング切れがないか
- 軒天に剥がれや変色がないか
- 雨どいから水があふれていないか
- 過去の補修箇所が再び傷んでいないか
- 雨漏り記録が建物ごとに整理されているか
よくある質問
Q.共用廊下の天井から水が出たら、屋根が原因ですか?
最上階であれば屋根や屋上防水が疑われますが、外壁、雨どい、笠木などが原因の場合もあります。中間階では上階廊下の床防水や配管も確認します。
Q.雨の日だけ水が出るなら雨漏りですか?
雨漏りの可能性が高まります。ただし、雨水が排水管へ影響している場合などもあるため、発生条件と周辺設備を確認します。
Q.晴れているのに水が出る場合はどうしますか?
給水管、排水管、給湯管、結露などを疑います。雨漏り調査だけでなく、設備配管の確認も必要です。
Q.シーリングを打てば止まりますか?
原因となる隙間が特定できていれば有効な場合があります。しかし、原因不明のまま広範囲に施工すると、内部の排水を妨げる可能性があります。
Q.共用廊下の床から下階へ雨漏りすることはありますか?
あります。床防水、排水口、側溝、立ち上がり、外壁との取り合いが傷んでいると、下階へ水が回ることがあります。
Q.笠木から雨漏りすることはありますか?
あります。継ぎ目、端部、固定部から水が入り、手すり壁内部を通って離れた場所へ現れることがあります。
Q.散水調査をすれば必ず原因が分かりますか?
原因特定に有効ですが、雨の条件や建物構造によって再現できないこともあります。目視調査や過去の発生状況と組み合わせて判断します。
Q.入居者から連絡が来たら最初に何をすればよいですか?
安全確保、水受け、写真記録、発生状況の聞き取りを行います。照明器具付近の場合は電気設備の安全確認も必要です。
Q.修理後は何を確認すればよいですか?
施工写真、補修範囲、使用材料を記録し、次の雨で再発していないか確認します。
Q.共用部の雨漏りは放置しても大丈夫ですか?
床の滑り、天井材の落下、鉄骨のサビ、電気設備への影響などにつながるため、放置は避けましょう。
まとめ
共用部から雨漏りしている場合、屋根だけを疑えばよいとは限りません。
最上階であれば屋根、屋上防水、雨どい、外壁上部、中間階であれば上階廊下の床防水、排水口、外壁、配管などを確認します。
エントランスでは庇や笠木、共用階段では踊り場防水や接合部、軒天では屋根と雨どいの両方が関係することがあります。
また、雨水は建物内部を伝って移動するため、水が出ている場所と入口が一致しないこともあります。
- 屋根材・棟板金・壁際板金
- 屋上・庇・共用廊下の防水層
- 雨どい・側溝・排水口
- 外壁のひび割れ・シーリング
- 笠木・手すり壁
- ベランダ・階段の取り合い
- 給排水管などの設備
原因を特定せず、濡れている場所だけを補修すると、雨漏りを繰り返す可能性があります。
発生時の写真、雨の強さ、風向き、発生時間を記録し、建物上部から水の経路を確認することが大切です。
共用部の雨漏りは、入居者の生活だけでなく、転倒や漏電、部材の落下など安全面にも関係します。
異常を見つけたときは応急対応を行い、屋根、外壁、防水、排水設備を一体で調査し、原因に合った修理を行いましょう。
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